007 ジェームズ・ボンド 色々(勝手)ランキング

このページは、スクリーンのジェームズ・ボンドに関する、管理人1人の考える勝手なランキングを挙げてみた。

他のページはなるべく根拠に基づく記載を心がけたつもりであるが、このページは勝手気まま、恣意的、言いたい放題なので、皆様と全く違う見方かもしれない。その点は何卒大目に見てご容赦いただければ幸いである。

 

 

■007映画の勝手ランキング

 

 

1位 女王陛下の007 On Her Majesty's Secret Service 1969年

文句ナシにこの作品が1位である。

 

原作に非常に忠実ながら、見事なスタントとそのシーンの編集でスリリングなものに仕上がった。

アクション一辺倒ではなく、原作と同様に若々しくスリムで、恋をして苦悩するボンド像も描かれている。原作を知らず、ショーン・コネリーの作品一辺倒だったファンからはかなり違和感を持たれたのは仕方が無いと言える。

 

この作品は素晴らしいにもかかわらず、下記の要因でその後あまり007ファンの心に残っていない。

 

①ジェームズ・ボンド役の交代

この作品でショーン・コネリーからたった一度限りジョージ・レーゼンビーに代わった事は有名だ。イアン・フレミングの没後であるので彼の本意はわからないが、レーゼンビーの外見、体型、身のこなしはかなり原作のボンドに近い。若くて、細身で、決してハンサムではないが浅黒くて魅力ある顔、本質的に自身満々であること・・・など。

 

一般観衆は既に、当初フレミングが猛反対したショーン・コネリー(アクが強く、毛深くて粗野で大きいマッチョなイメージ)に慣れきっており、ボンド役のショーン・コネリーではなく、ショーン・コネリー=ボンド となっていた。

 

②長過ぎた本編時間

後にもにも先にもボンド映画は、映画界の標準である120分前後におさまっている。

これは劇場での1日の放映回数と密接に関わっており、いくら製作側がいい映画を作っても、時間が長過ぎると配給先からソッポを向かれる。1日の放映回数が1回少なくなるだけで、単純に収益が20%~25%は失われるからだ。

 

「女王陛下の007」は当時としては異例の144分(2時間22分)という長さだ。

編集の名手ピーター・ハント監督から最終の本編時間を聞かされた製作者のハリー・サルツマンが激怒したという逸話がある。確かにこの映画は、無駄なカットは少なく、見ていて冗長性も感じない。既にたくさんの重要なシーンがカットされており(例えば紋章院でのボンドを、ブロフェルドの部下が尾行して会話を盗み聞くシーンなど)、ハント監督もこれ以上の妥協はできなかったようだ。

 

それがどういう影響を及ぼしたかと言うと、第一に劇場でのリバイバル公開を敬遠される。

当時はビデオなどなく、ファンにとってはリバイバル公開が唯一の楽しみであった。特に旧作は2本立てになることが多く、144分などという作品はカップリングされない。

 

第二に、テレビ放映されない。

テレビはCM込みで1時間50分以内という枠が決まっており、正味90分程度に編集される。たいていの映画は90分から120分なので編集してもストーリーに影響が出ない。ごく稀に故・荻昌弘さんの「月曜ロードショー」で「女王陛下の007」のテレビ放映があったが、144分の作品を90分程度に編集してあり、もはや映画の体を成していなかった。

冒頭のトレーシーとの出会いと海岸でのアクションシーンからタイトルバック、主題歌は全てカット。いきなりカジノから話が始まる。また、弁護士事務所にブロフェルドの手紙を盗みに行くシーンも全面カット。その他も色々カットされており。テレビ放映で初めて見た人はストーリーがわからなかったに違いない。

 

③シリアス過ぎた演出

この映画には、ノーテンキに明るいジョークを飛ばすボンドはいない。

加えて、冒頭のシーンやスキーチェイスなど夜や明け方のシーンが多く、他の作品と比較して作品の色調が全体的に「暗い」印象がある。

 

また、ボンドカーとしては地味な印象の「アストンマーチンDBS(1969年式)」が使われ、多くのボンドファン待望の秘密兵器も皆無だ。悪役との対決も、自分の知恵と体力だけで乗り切っており、秘密兵器での一発逆転はない。そのため、威圧感のあるテリー・サバラスのブロフェルドとの緊張感のある会話や対決が見所である。

 

④悲劇的な結末

数少ない悲劇的な結末の007作品だ。ハッピーエンドに慣れていたそれまでのボンド映画ファンは、初公開時には煮え切らない気持ちで帰路についたことであろう。

私はロジャー・ムーアやショーン・コネリーのボンドを全て観た後に、劇場のリバイバルでこのシーンを見た。このシーンは記念すべきレーゼンビーの顔の初登場なのだが、「おいおい、お前は一体誰だ?」と心の中で叫んだことを覚えている。

冒頭のアクションシーンの後に、コアなボンド・ファンの間では有名な「This Never Happen To The Other Fellows」という名言の捨て台詞が生まれる。

この時既に私はこの映画に引き込まれていた。


この台詞には色々な解釈が可能で面白い。

私は「他の女じゃこんなコトは起こらないだろう!」

と「他のボンド役者(暗にショーン・コネリーを差す)じゃこんな目に合わないだろう」

をかけているように解釈した。この映画の数少ないユーモアのシーンだ。



 

 

 

さて、2位から10位は以下のようになる。

ロジャー・ムーアの作品が比較的多いのは、原作とは大幅に異なるものの、私がロジャー・ムーアのボンド世代だからだ。私が小学生から大学生までの多感な時期に、欠かさず公開日に1人で朝から3回観たものだった。

 

また、特徴的なことは、ジョージ・レーゼンビー、ロジャー・ムーア、ティモシー・ダルトン、ピアース・ブロスナン、ダニエル・クレイグ と、ボンド役者が交代となった最初の作品は評価が高くなっている。ブロスナン、クレイグの時は数年間かけてじっくりと脚本を熟成させることができたこと要因であろう。

 

2位 ユア・アイズ・オンリー FOR YOUR EYES ONLY 1981年

原作の短編小説と、秘密兵器に頼らないアクション、シリアスなボンドと適度なユーモアのバランスが見事に調和した作品。原作のファンからも支持の高いロジャー・ムーア時代の最高傑作。

 

3位 ロシアより愛をこめて FROM RUSSIA WITH LOVE 1963年

原作同様、スリリングな展開と美しい景色が素晴らしい。アタッシューケース程度の秘密兵器はリアリティがあった。ショーン・コネリーの頭髪と脂肪がギリギリ許せるのはここまでか。

 

4位 カジノロワイヤル CASINO ROYALE 2006年

ピアース・ブロスナンで支離滅裂となった方向性を完全修正し、シリアスなボンドの世界に戻してくれた記念すべき作品。ただ、海から上がった時のクレイグの頭髪はそろそろヤバい?

 

5位 リビング・デイライツ LIVING DAYLIGHTS  1987年

演技派俳優が原作のボンドを表現するとこうなるお手本。壮大な娯楽映画となったロジャー・ムーアから、真剣さと若さと体力と付け加え、笑いと顔のシワを取るとこうなった。

 

6位 ドクター・ノー Dr.No  1962年

記念すべき第一作目。それまでのアクション映画の常識を打ち破った。今見ても古さを感じさせない。原子力炉内やプールの構造は、福島原発事故問題の後で見てもセットの完成度に驚愕する。

 

7位 死ぬのは奴らだ LIVE AND LET DIE  1972年

今観ると子供だましの要素が多くお笑い路線だが、当時の少年は夢中になった。新たなボンド像を築き上げ、消えかかった007映画の灯をその後10年以上も安泰なものにしたムーアの功績も評価したい。

 

8位 私を愛したスパイ THE SPY WHO LOVED ME 1977年

駄作だった「007は二度死ぬ」を海の上の脚本に変えて蘇った。「ジョーズ」や潜水艇にもなる「ロータスエスプリ」など、リアリティは低いのだが、不思議に幼稚さは感じなかった。

 

9位 ゴールデンアイ GOLDEN EYE 1995年

行き着くところまで行ってしまったボンド映画。誰が演じてどのようになるのかファンはやきもきしていた。良い脚本に恵まれ、キザな伊達男のブロスナンが好演した。

 

10位 オクトパシー OCTOPUSSY 1983年

ロジャー・ムーア時代の「シリアス+ユーモア+ファンタジー」の完成形。ボンド映画としては??の部分もあるが、娯楽映画としては文句なくA級作品であった。

 

 

 

007映画 駄作ワースト

007映画ファンとしては、駄作ランキングをやるべきではないのは百も承知だ。でも、愛すべき駄作があってこそ、次の作品が生きるのである。その証拠に、ランキングさせた駄作の次の作品は傑作ばかりだ。

 

「寅さん」や「釣りバカ日誌」のようにこれといった駄作がない特異なシリーズものもあるが、駄作は長いシリーズものの宿命。激励と愛をこめてのランキングだ。

 

1位 ノー・タイム・トゥー・ダイ  No Time to Die  2021年

娘と愛する人を守るために死を選ぶという、およそ原作のボンドとはかけ離れた後味の悪い脚本。クレイグ最後ということで、カジノ・ロワイヤルから続くストーリーの連続性とスペクターに囚われすぎた。

 

2位 ワールド・イズ・ノット・イナフ  WOLD IS NOT ENOUGH  1999年

支離滅裂なストーリー、壮大過ぎるアクション、劇場で一度観て以来、二度と観る気が起らなかった作品。冒頭の奇妙な高速潜水ボートしか記憶にない。全く心に残っていない駄作。

 

 

3位 ダイ・アナザー・デイ Die Another Day 2002年

個々のアクションはまずまず楽しめるものの、映画全体として観ると心に残るものがない。ダイ・ハードでは血だらけになるようなアクションを、スーツで汗もかかずにやる非現実的なボンドの誕生作品。

 

 

4位 ダイヤモンドは永遠に DIAMONDS ARE FOREVER 1971年

ジョージ・レーゼンビーを説得していればシリアス路線に戻ったものを、中年太りのカツラ(失礼)の大御所復帰に用意されていたのは茶番のシナリオとドタバタ寸劇。ゲイの殺し屋コンビも弱過ぎて笑えた。

 

 

5位 黄金銃を持つ男 THE MAN WITH THE GOLDEN GUN 1974年

「死ぬのは奴らだ」の直後にクランクインし1年後に公開したため、煮詰め不足は仕方がないか。全く恐怖を感じさせないニックナックをはじめお笑いポイント満載なのがこの映画の唯一の長所。

 

 

6位 007は二度死ぬ YOU ONLY LIVE TWICE 1967年

円谷プロに大きく劣るチャチな宇宙ロケットの特撮、日本人にも外国人にも異様に移る日本文化の描写。「女王陛下の007」と公開順が逆になったため、本来はトレイシーの敵討ちのシリアス路線のはずが、シナリオが大幅に狂い、異色の原作の特徴や良さが出せなかった。

 

 

 

 

 

ボンドガール ランキング

ボンドガールのランキングは、作品の出来栄えとは切り離して軽い気持ちでランキングさせた。ボンド映画のみならず、その女優の前後のキャリアや魅力も多少影響しているかもしれない。

 

 

1位 ジェーン・シーモア  Jane Seymour  (LIVE AND LET DIE)

 

色々な賛否はあろうと思うが、清楚な美しさが印象的だった。

いっきに歳をとって今では見たくないボンドガールが多い中で、未だにイギリスやアメリカのホームドラマで活躍しており、年齢を全く感じさせない美貌は健在だ。 

 

 

2位 ダニエラ・ビアンキ Daniela Bianchi (FROM ROSSIA WITH LOVE)

 

旧ソ連が舞台の映画なので、英米的ではなく、どこか無国籍な美貌の印象があるイタリア出身のダニエラ・ビアンキはまさに適役だった。英語がほとんど喋れなかった(映画内では全て吹き替え)ため、国際的にはこの映画以降の活躍はほとんどないのが残念だった。 

 

 

3位 リン=ホリー・ジョンソン Lynn-Holly Johnson (FOR YOUR EYES ONLY)

 

「ユア・アイズ・オンリー」で有名になったキャロル・ブーケ(シャネルのCMでお馴染み)ではなく、脇役ビビを好演したリン=ホリー・ジョンソン。映画同様、実際にオリンピック候補のスケーターだったが美貌を買われ「アイスキャッスル」に主演。その演技でファンになってしまった。 

 

 

4位 バーバラ・バック Barbara Bach (THE SPY WHO LOVED ME)

 

旧ソビエトの女スパイを演じたバーバラ・バック。アメリカ人であるがエキゾチックな顔立ちで、スラブ系の白人に見えるので、ロシアのスパイは適役。特徴ある表情でロジャー・ムーアと絶妙のかけ合いが印象的だった。特に、見事なおデコがチャームポイントであった。後にビートルズのリンゴ・スターと結婚する。

 

 

5位 ダイアナ・リグ Diana Elizabeth Rigg (ON HER MAJESTY'S SEACRET SERVICE)

 

ダイアナ・リグが他のボンドガールと違うのは、元々女優としてのキャリアがかなり豊富であったこと。新人のレイゼンビーに対してのベテラン起用だったのであろう。日本でもテレビドラマの「おしゃれ(秘)探偵」でお馴染みであった。ボンドと結婚するという、歴代のボンドガールの中で最もシリアスで難しい役であったが、さすがに見事に演じ、その演技力は映画にリアリティをもたせた。

 

 

ここで教訓!

 

ボンドガールの近況を知ろうとするのはやめましょう! 特に現在の写真を見るのはやめましょう!! 綺麗なオバさんになっているのはジェーン・シーモアとモード・アダムスくらいです・・・

 

 

 

 

主題歌ランキング

007映画を語る上で欠かせないのが主題歌です。

昔のボンド映画では、その主題歌の雰囲気に合ったキャリアある歌手や実力ある新人などが選ばれていました。あくまで映画の芸術性が優先され、歌手はあくまで黒子役でした。

 

ところが、映画の雰囲気にそぐわない「時の人」のロックバンド系が、その話題性だけを重視して起用されはじめてから、007映画の主題歌の魅力が半減したように思います。そのへんを加味してのランキングです。

 

 

1位 NOBODY DOES IT BETTER        CARLY SIMON

 

いつ聞いても素晴らしい。やはり007映画には女性ヴォーカルのバラードが一番似合う気がします。シンガーではなくシンガーソングライターのカーリー・サイモンの起用は大正解でした。こぶしガンガンで歌い上げるシャーリー・バッシーのようなシンガーとは違い、ヴィブラートをきかさずに素直に歌う歌唱力はカーリー独自のものです。私の大好きなアーティストですが、彼女の澄んだ大人っぽい声はこの映画にぴったりでした。恐らくメロディラインや絶妙な音程などは彼女がかなりのアレンジを加えたと予想されます。タイトルバックのアクションで大拍手が起きてからしっとりと主題歌に入る構成も見事でした。

 

映像は作曲者のマーヴィン・ハムリッシュのピアノに併せてカーリーの生歌が聞ける映像です。美しい声と長い美脚が魅力的でしたね。彼女は今でもギターを手に元気に活動しています。

 

 

2位 LIVE AND LET DIE       PAUL McCARTNEY&WINGS

 

えっ?? あのポール・マッカートニーが007の主題歌を??? 当時は大きな話題となりました。原作同様に黒人を多く起用し、ブゥードゥー教の儀式とともにスリリングな展開をそのまま曲に表現し、バラードからロック調に激変する構成が見事でした。画像は当時のプロモーションライブです。もちろんリンダとデニー・レインの顔も見えます。ウイングスはその後も数えきれないほどの名曲を生み出しましたが、この曲は彼らの代表作にもなり、後にGuns N' Rosesのアクセル・ローズもライブでよく歌っていました。 この映像の最後の「仕掛け」は面白くて見ものです。

 

 

3位 FOR YOUR EYES ONLY               SHEENA EASTON

 

どうしても好きな映画の主題歌は一緒に好きになってしまいます。これまでの007映画ではキャリアを積んだベテランが起用されていましたが、当時のシーナは1stアルバム「TAKE MY TIME」を出したばかりの新人。しかも初めて主題歌に本人の画像が流れるという異例の扱いでした。演出を手がけた有名なモーリス・ビンダーにその理由を聞いたところ「美人だから」と言ったそうです。確か150cm台の小柄でグラマーな体と澄んだ繊細な声で絶大な人気がありました。若かった私も、シーナ・イーストンの美貌に参ってしまった一人でした。

 

 

4位 ON HER MAJESTY'S SEACRET SERVICE

 

これが主題歌なのか、サッチモが歌った「We Have All the Time in the World」のほうが主題歌なのかよくわかりません。しかし印象に残ったのはこっちのほうでした。恐らくシンセサイザーを使ったメロディと、ピックとワウ・ペダルを使った特徴的なベースが新しい007のテーマフレーズとなり、これから始まるこの映画の緊迫感を予測しているようです。レイゼンビーの新ボンドの顔が初めて映し出されて、逃げていくトレイシーに向かって「This Never Happen to the Other Fellow」と捨てゼリフを残し、この曲につながっていくシーンは実にカッコ良いですねぇ。走り去っていくレイゼンビーのシルエットの手にはちゃんとトレイシーのハイヒールが握られています。この曲は映画内のアクションシーンでも効果的な役割を担っていました。新ボンドへの移行を意識したのか、映像内に過去のボンド作品がつながって出てきます。