007 ジェームズ・ボンドのアタッシュケース
あまりにも有名なアタッシュケース(正式にはアタッシェケースまたはブリーフケースと呼ぶ)。
映画「ロシアより愛をこめて」でQ課より通常装備として支給される。
映画内で使用されたものは、黒皮で深さ4.5インチ、内張りが全て赤という一般では珍しい仕様のイギリスの名門スウェイン・アドニー・ブリッグ社のアタッシュケースをベースに改造された。
ショーン・コネリー扮するジェームズ・ボンドはいつも通り「ふん」と小ばかにしたような態度をとる。しかし後にヘリコプターの襲撃にAR-7ライフルが、そしてオリエント急行内のグラントとの死闘で、ソブリン金貨と仕込んである投てきナイフが役立つことになる。
アタッシュケースには
①催涙ガスを仕込んだ「CLUB TALC」のタルカムパウダー(ケースをそのまま開けると噴射)
②木製ストック内にバレル、本体&トリガー、マガジンを収納できるAR7ライフル
③AR7ライフル用の、ズーム・暗視機構付き小型スコープ
④AR7の22口径カートを隠してある、ケース底の鋲を模したパイプ2本
⑤ケース両側サイドに隠して収納される投てきナイフ
⑥画像にはないが、ケース内に隠してあるソブリン金貨50枚(現在の時価で約100万円相当)
⑦画像の前面にあるのは、オリエント急行の乗車券
⑧ワルサーPPK用の予備マガジンクリップ1本
などが入っている。
以前、SDスタジオが発売したものには、肝心のAR7とスコープは入っていないが、作戦指示書やイスタンブール周辺の地図などが入って20万円ほどで限定販売されていた。
もちろんソブリン金貨はダミーである。
AR7については別途詳しく紹介するが、木製ストックの上にあるバレル、本体&トリガー、マガジンがストック内に収納されて、コンパクトに携帯できる。
「ロシアより愛をこめて」以降で、アタッシュケース自体がクローズアップされることはないが、「ゴールドフィンガー」「女王陛下の007」でAR7が登場する。
小型でズーム・赤外線照準機能があるスコープは、ソ連の諜報員のクリレンク暗殺の際に使用される。
また、「女王陛下の007」ではタイトルバック前の冒頭シーンで、アストンマーチンDBSのダッシュボードからスコープを取り出し、海岸で自殺を図るトレーシーを目で追う際に使用した。
映画内ではスコープの照準から覗いた目線で映画が撮られており、実に洒落たシーンとなっている。
個人的には、007映画では恒例となっている冒頭シーンの中で、この映画が一番好きである。
大人用のいわゆるベビーパウダーである「CLUB Talc」のタルカムパウダーのケース内には数秒間の効き目がある催涙ガスが入っており、ケースを開く際にツマミを横に回さずにそのまま空けると、ガスが噴射される。
映画「ロシアより愛をこめて」は名作として支持されているが、短い期間で製作されたために、実は色々なシーンを撮り過ぎて製作過程ではストーリー展開がぐちゃぐちゃなってしまった。
結果的には、見事な編集でワクワクするような映画に仕上がった。
編集担当だったピーター・ハント(その後もアクションや第2班の監督を務め「女王陛下の007」では監督となった)は、テレンス・ヤング監督が「編集はまだか?」しつこくせっついてくるのに対して、ボンドがアタッシュケースを開けた瞬間に大爆発してエンディングテーマが流れて映画が終了するおふざけ動画を渡したところ、大ウケだったという逸話がある。
(「ロシアより愛をこめて」DVD特典映像特集より)